運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 そして流暢な英語で話し始めた。新規事業の件らしく、ハワイに出店予定のリゾート施設の交渉のようだった。アメリカの高級チェーンとの話し合いらしいが、どうやら難航しているらしい。病室が静かだったため、相手の声まで聞き取れてしまう。パーセンテージの譲歩を迫られているようで、社長自らトップ同士で交渉に臨んでいるのだろう。

「ええ、その数字は譲れません」
 優希くんの凛とした声がそう告げると、相手は無言のまま電話を切ったようだった。彼はしばらくスマホを持ったまま目を閉じ、深く息を吐くと、すぐに別の相手へ電話をかける。資料の修正や数字の見直しを、懇切丁寧に指示していた。

「じゃあ、またあとで確認するから」

 最後にそう言って通話を切った彼の横顔には、かつて見たことのない「経営者」の顔が浮かんでいた。
「すまなかった。出ないわけにはいけない相手で」
 そう伝える彼に、私は小さく首を振って見せた。
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