運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 私は唐揚げをふたつ、少し迷ってからサラダとラタトゥイユを選び、トマトのスープも添える。暑さでバテそうな日には、これくらいのバランスがちょうどいい。
「唐揚げ? 晴香にしては珍しい」
 トングを手にする私の隣で、紗江が少し驚いたように言った。彼女のトレーには、玄米ご飯に鯖の塩焼き、ひじきの煮物、そして冷ややっこ。いかにも健康志向な内容だ。
 私も普段は揚げ物を選ぶことは少ないが、朝から琴音にいびられて朝食をとる暇がなかった。

「今日はちょっとお腹すいてるの。紗江こそ、なんか旅館の朝ごはんみたい」
「うるさいわね。これが私のルーティンなの」
 笑い合いながら、トレーを持って窓際のテーブルへと戻る。いつもの、落ち着いた場所。
 穏やかな昼休みのひとコマ――そう思った、そのときだった。
 ふと、紗江が入り口の方を指さす。

「あっ、社長のお嬢様じゃない? 珍しい」
「えっ?」
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