運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
「あの――」
 今度は何を言うつもりなのだろうか。受付の花とも呼ばれる琴音は、どこにいても目立つ存在なのだから、これ以上余計なことはやめてほしい。そう思った矢先、琴音はくるりと身を翻し、私のそばに来ると強く手を握りしめた。

「本当に、さっきはごめんなさい!」
 そう言いながら、彼女は私の手に何かを握らせる。私は曖昧な笑みを浮かべつつ琴音の手をそっとほどき、紗江と一緒にカフェテラスをあとにした。

「なんかさ……。可愛い人だけど……裏もありそう」
 廊下に出た瞬間、紗江が小声でそう言った。「そうだよ」と心から肯定したいところだったが、家族であることは父から絶対に口にするなと釘を刺されていることもあり、私は「そうかもね」と曖昧に答えるしかなかった。

 エレベーターで紗江と別れ、私はようやく手の中に握らされた小さなメモを広げた。

 ――「今日の帰り、ここに行って依頼してあるものを取ってきて」。
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