私と彼と彼のアンドロイド
おかげで光稀と結婚した今、スーパーで庶民感覚で買い物をして、大学でもほかの人とかわりなく生活できているように思える。
彼は結婚をどう思っているのだろう。嫌そうなそぶりは見せないし、ごはんは毎回、喜んでくれている。家事はできる限り家電を使い、楽をさせてくれている。
だけど。
「一緒に選びたかったなあ」
結婚式を終えたらもう家も家電もなにもかもそろっていた。大型冷蔵庫、洗濯乾燥機、お掃除ロボット、食器洗浄機、エアコン、すべて最新。ピアノも買ってくれようとしたので、慌てて止めた。
婚約指輪と結婚指輪は誰もが憧れる高いブランド。嬉しいけれど、一緒にあれやこれやを話し合いながら買いたかった。
自分の部屋の家具すら彼が選んだもので、子どものころに憧れていたお姫様みたいな家具は嫌いではないけれど今の自分の趣味ではない。何不自由ない生活だが、ひとりの大人として見てもらえてないのがはがゆい。
家事については彼が家政婦を雇おうとしていたのを断固として断って音緒の担当になった。それくらいはしないと妻でいる意味を感じられない。家事イコール妻という時代ではないけれど。
電車を降りて帰る途中に見かけた喫茶店で、『バイト募集中!』の張り紙を見て立ち止まる。
「バイトをしたらちょっとは大人に見てもらえるかな。社会経験にもなるし」
みんなから聞くバイトの苦労話に「へえ、そうなんだ」ではなくて「わかるわかる!」と答えたい。自分で稼いだお金で彼へのプレゼントを買いたい。
バイトをしたいって再度頼んだら彼はどう思うだろう。子どものわがままだと思われたくないが、今のままだとなおさら子どもみたいだ。
自宅の前に着くと、車庫に車があるのが見えた。もう光稀は帰っているらしい。
両手の人差し指で口角を上げて、笑顔を作った。大好きな彼の前ではにこやかにしていたい。
「ただいまー」
鍵を開けて中に入り、リビングに行く。
「お帰り」
「お帰り」
声がふたつ聞こえて、振り返る男性がふたり。
音緒は声もなく驚愕にすくみ、持っていた荷物をどさりと落とした。
そこにいたのは、ふたりの光稀。
同じ顔がふたつ。にこにこと笑っていて、音緒はなにも言えずに彼らを見つめ返した。
第一話 終
彼は結婚をどう思っているのだろう。嫌そうなそぶりは見せないし、ごはんは毎回、喜んでくれている。家事はできる限り家電を使い、楽をさせてくれている。
だけど。
「一緒に選びたかったなあ」
結婚式を終えたらもう家も家電もなにもかもそろっていた。大型冷蔵庫、洗濯乾燥機、お掃除ロボット、食器洗浄機、エアコン、すべて最新。ピアノも買ってくれようとしたので、慌てて止めた。
婚約指輪と結婚指輪は誰もが憧れる高いブランド。嬉しいけれど、一緒にあれやこれやを話し合いながら買いたかった。
自分の部屋の家具すら彼が選んだもので、子どものころに憧れていたお姫様みたいな家具は嫌いではないけれど今の自分の趣味ではない。何不自由ない生活だが、ひとりの大人として見てもらえてないのがはがゆい。
家事については彼が家政婦を雇おうとしていたのを断固として断って音緒の担当になった。それくらいはしないと妻でいる意味を感じられない。家事イコール妻という時代ではないけれど。
電車を降りて帰る途中に見かけた喫茶店で、『バイト募集中!』の張り紙を見て立ち止まる。
「バイトをしたらちょっとは大人に見てもらえるかな。社会経験にもなるし」
みんなから聞くバイトの苦労話に「へえ、そうなんだ」ではなくて「わかるわかる!」と答えたい。自分で稼いだお金で彼へのプレゼントを買いたい。
バイトをしたいって再度頼んだら彼はどう思うだろう。子どものわがままだと思われたくないが、今のままだとなおさら子どもみたいだ。
自宅の前に着くと、車庫に車があるのが見えた。もう光稀は帰っているらしい。
両手の人差し指で口角を上げて、笑顔を作った。大好きな彼の前ではにこやかにしていたい。
「ただいまー」
鍵を開けて中に入り、リビングに行く。
「お帰り」
「お帰り」
声がふたつ聞こえて、振り返る男性がふたり。
音緒は声もなく驚愕にすくみ、持っていた荷物をどさりと落とした。
そこにいたのは、ふたりの光稀。
同じ顔がふたつ。にこにこと笑っていて、音緒はなにも言えずに彼らを見つめ返した。
第一話 終