貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
パンと薄い紅茶でしのいでいるジェシカにとって、この厨房は宝の山だ。

「カンさん。このニンジンの皮と、セロリの葉っぱをもらってもいいですか?」

「ええ、どうせ捨てるものですから、かまいませんよ」

ジェシカは手早くビニール袋に入れると、期待感に包まれていた。

これとコンソメで、美味しい野菜スープがつくれるではないか!!

「ジャムとバターを用意しましょうか?」

「ああ、ありがとうございます。
バターは冷蔵庫、イチジクのジャムとママレードにします。
パントリーにあるので、出しておいてください」

カンは指示を出しながらも、手際よくサラダをつくっていく。

ジェシカはパントリーに入り、ずらりと並んだ瓶の棚を眺めた。

ジャムはいろいろな種類があり、ラベルにライオンのマークが金で刻印された王室御用達のものだ。

素晴らしい!!

ふたを開けると、濃縮された果実の匂いがする。

美しいガラスの器に盛りつけると、
黄金に彩られた神様の食べ物のようだ。

盛り付け終わると、スプーンについたママレードの残りを、指ですくい取りなめた。
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