貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
胸を張って歩くスタイリストの後に、これから競りにかけられる羊のような気分で、ジェシカが続いた。
目の前のソファーに、アレックスが、腕組みをして足も組んでいる。
値踏みをしているのか、ジェシカを見ると目を細め、少し首をかしげた。
ジェシカはその視線に耐えられなくて、うつむいた。
つけまつげが重い。
「いかがでしょう。髪の色が引き立つようシンプルで、色も統一感をもたせるようにしました。
清楚で上品な感じがよろしいかと」
「うん、いいね。送ってもらった写真より、実物のほうがいい」
アレックスが立ち上がった。
「車を回してください。すぐに出ます」
その声で、支配人とスタイリストは、すぐに姿を消した。
「ジェシカ、これから食事という事を聞いていますね」
「はい・・・」
アレックスが先に歩いたが、何かの異変を感じたのか振り向いた。
ジェシカが弱った虫のように、壁沿いに手をついてそろそろ歩いている。
「何をしているのですか?」
アレックスが不審げに、ジェシカの側に戻ってきた。
「こんなヒールが高いの・・・初めてで・・・
ぐきっとなりそうで、ゆっくり歩かないとコワイです」