「帰りたくないんだろ」~好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!~
* * *
「お先に失礼します」
蒔田は席を外していたが、今日のぶんの業務は終わっており、定時を過ぎたので、彼女はそう周りに声をかけて、席をあとにする。
早く帰っても。
することなんか、無いけど。
「買い物でもして帰ろっかな……」この場合の買い物とは、先ほどの意味とは違う、ショッピングの意味だ。
ビルとビルの谷間には、ビジネスマンの心を癒やすためだろうか、緑生い茂る公園がある。ちょっと遠回りになるけれど、そのなかを突き抜けて帰るのが、彼女の密かな楽しみだった。
「あ? なに言ってんだ。おれを誰だと思っている」
聞き覚えのある声がする。
蒔田だ。
彼女は、思わず、足を止め、近くの木の影に身を隠す。
「馬鹿言え。相変わらずだな、和貴(かずき)は。――で。おまえは。元気してんのか」
ぞんざいな物言い、俺様な口調。
間違いなく、蒔田だ。
歩きながら電話をしているらしく、彼女の傍を通り抜ける気配があった。
「そうか。うん。じいさんも変わらずか。ああ。稜子(りょうこ)か? うん。まあ、そうだな、今度兄貴に電話してみるさ」
(お兄さんなんて、居るんだ?)
「お先に失礼します」
蒔田は席を外していたが、今日のぶんの業務は終わっており、定時を過ぎたので、彼女はそう周りに声をかけて、席をあとにする。
早く帰っても。
することなんか、無いけど。
「買い物でもして帰ろっかな……」この場合の買い物とは、先ほどの意味とは違う、ショッピングの意味だ。
ビルとビルの谷間には、ビジネスマンの心を癒やすためだろうか、緑生い茂る公園がある。ちょっと遠回りになるけれど、そのなかを突き抜けて帰るのが、彼女の密かな楽しみだった。
「あ? なに言ってんだ。おれを誰だと思っている」
聞き覚えのある声がする。
蒔田だ。
彼女は、思わず、足を止め、近くの木の影に身を隠す。
「馬鹿言え。相変わらずだな、和貴(かずき)は。――で。おまえは。元気してんのか」
ぞんざいな物言い、俺様な口調。
間違いなく、蒔田だ。
歩きながら電話をしているらしく、彼女の傍を通り抜ける気配があった。
「そうか。うん。じいさんも変わらずか。ああ。稜子(りょうこ)か? うん。まあ、そうだな、今度兄貴に電話してみるさ」
(お兄さんなんて、居るんだ?)