「帰りたくないんだろ」~好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!~
 相手の現状を直視せず、自分勝手に妄想を膨らませていたのだから。

 いつからか、自分の現実と相手の現実とがすれ違っていた。兆候はあったのだ。

 会社に入ってからろくろく連絡を取っていなかった。彼氏も忙しかった。

 忙しくても互いを想い合うこころがあれば大丈夫、と過信していたのだ。

 それを知らず、二人は笑っている。

 お互いの未来が繋がっていると、信じきっていた、あの頃。

 消そう、消そう、と待ち受けを見るたびに思う、でも、……

 消してしまったら、本当に終わってしまう気がするのだ。

 嬉しかったことも、楽しかったことも、全部全部。


「携帯見るか煙草吸うかどっちかにしたらどうだ」


 はっと現実に意識を戻す。蒔田が目の前に立っていた。

 背の高い蒔田がすこしうつむけば、彼女の携帯電話を覗きこむ格好になる。彼女は、駄目です! と叫んで携帯を隠した。

「別に、……覗いちゃねえよ。不慮の事故だ」
「見たんですね……あたしの待ち受け」
「悪かった。ひとの会話を盗み聞きした仕返しだ、それも二回も」
「いっ……!」
 気づかれていたのか。
 先日のことも。
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