「帰りたくないんだろ」~好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!~
 向こうから来る若いリーマン集団なんかすっげーと言ってこっちを指さしてる。見せ物じゃないんだから。
 しかし、蒔田といったら眉一つ動かさず淡々と歩くのみ。

「で、でもせめておんぶとかもっと目立たない方法とか……」

 ここで、どうしてだか。

 蒔田が、俯いた。

「どうしたんですか」

 いつも彼女にぽんぽん言い返す彼にしては珍しい。

「……カートが、」
「え?」
「スカートが、ちょっとな……」

 あっ、と彼女は声をあげそうになった。

 今日の服装は、白いシャツに黒の膝上のタイトスカート。

 仮におんぶしちゃったら、スカートがまくれあがっちゃうとかそういうこと気にしているんだろうか……、この上司は。

 煮え切らない蒔田の好意に、彼女は、黙って甘んじることとした。

 彼女は、近くにある蒔田の顔を覗き見る。

 上司の顔。

 近くに見ても、陶器のようで美しい……。どんなお手入れしてるんだろう。肌のお手入れなんて無頓着そうなのに。

 化粧をしないのがやっぱり肌にいいのか。

 そして整った顔。無愛想で無表情が常でも、美しいことには変わりがないのだ。
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