治療不可能な恋をした

理人は、そっと握った梨乃の手を自分の膝の上に導き、軽く引き寄せた。逃げ道を塞ぐように、指先を絡める。

梨乃は、ほんのわずかに戸惑ったように目を泳がせた。けれどその曖昧な沈黙が、むしろ理人の胸を煽った。

「……こっち来て」

そう促し、理人はその手を引いたまま立ち上がる。

梨乃は潤んだ目で理人を見上げ、ほとんど無意識のように、ゆっくりと立ち上がった。そのまま部屋の隅に置かれたベッドの前で向かい合う。

不安と戸惑いの入り混じった瞳が向けられた。それでも、握った手は離さない。

理人はもう片方の手で梨乃の手をそっと包み込み、ふっと浅く息を吐いた。

「……嫌じゃない?」

自分でも驚くほど低い声だった。

けれど梨乃は頬を赤らめ、ほんのわずかに首を振った。

その仕草が、理人の最後の理性をじわりと崩した。

細い腰に手を回し、ベッドの縁へと促す。梨乃がためらいがちに腰を下ろした瞬間、理人も隣に膝をつき、そっと頬に指を這わせた。

「……仁科」

名前を呼ぶ声は、掠れていた。

(お前が、好きだ)

そのまま、ゆっくりと唇を重ねる。

梨乃の体が一瞬だけこわばるのを感じたが、すぐに力が抜け、静かに目を閉じた。

唇を重ねたまま華奢な肩を抱き寄せ、そのまま静かにベッドの上へと倒れ込んでいった。


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