治療不可能な恋をした
だから遠い。言葉にしなくても、伝わってきた。
理人は、無意識に唇を噛んだ。
(……なるほどな。だから、眼中にねえってわけだ)
知らず知らず、グラスを置いた手に力がこもる。
「……なら、俺から近づけば、ちょっとは意識変わる?」
そう言いながら、理人はソファに置いた自分の手を、そっと梨乃の方へと伸ばした。
「えっ……」
ほんのわずかに触れた指先に、梨乃がびくりと肩を揺らす。その反応が、なぜだか理人の胸を煽った。
そして、気づけば──理人はそのまま、ゆっくりと梨乃に顔を寄せていた。
鼻先が触れかけた瞬間、梨乃の体がわずかに強張る。けれど、拒まれなかった。その事実に、理人の欲がじわりと膨れ上がった。
──もう、引き下がれなかった。
理人はそのまま、そっと梨乃の髪を耳にかける。驚いたように瞬きをした梨乃が、無意識に後ろへ引きかけた。
だが、それを追うように、理人は静かに距離を詰める。
そして今度こそ、ためらうことなく唇を重ねた。
梨乃の体が硬くなるのがわかった。けれど理人はその静かな混乱を感じ取りつつも唇を離すことなく、そっと梨乃の手を握った。
「……逃げるなよ、仁科。頼むから」