治療不可能な恋をした

再会したのは、理人が転院して間もない頃だった。

久しぶりに見た梨乃は相変わらず色白で、華奢で、どこか儚げで。完璧な無表情の中で小さく首を傾げる仕草は、まるで警戒心の強いうさぎのようだった。

(……変わってねぇな)

胸の奥が、不意に熱を持った。もう何年も経ったはずなのに、見た瞬間に蘇ったあの頃の感情。

何かと理由をつけては梨乃に絡んでいった。
仕事の帰りには食事に誘い、カンファレンスでは隣を陣取り。

同期だから当たり前──そんな顔をしながら、内心では彼女に近づく理由が欲しくてたまらなかった。

けれど梨乃は、どこまでも変わらずに距離を置こうとした。

「私なんか誘わなくても、一緒に行ってくれる人なんて、たくさんいるでしょう」

外来からの帰り道、不意にそんなことを言われたとき、理人の中で何かがカチリと音を立てた。

(……また、それかよ)

相変わらず自分を“遠い存在”だと言い切る梨乃。思い出すのは、あの朝。逃げられた失意とトラウマが、一気に押し寄せた。

どうしようもなく腹が立った。同時に咄嗟に腕を掴んでしまうほど、寂しさが胸に押し寄せた。
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