治療不可能な恋をした
「その仁科さん、さっきフラフラしながら外に出てったから、一応教えとこうと思ってな」
「……は?」
その一言に、胸の内側がざわりと波立った。
「たまたま見かけただけだけど。顔色あんまり良くなさそうだったし。……どうする?色男」
「……っ」
理人は返事もせず、そのまま黒川の横をすり抜け、足早に会場の出口へ向かった。
人影は、すぐに見つかった。
廊下の壁に体を預け、俯いたまま微かに肩を上下させている。理人はためらうことなく歩み寄り、声をかけ肩を貸して部屋まで送る。
水を飲ませれば気分の悪さは治ったのか、蒼白だった顔色は色味を取り戻した。
「しばらく一緒にいる。万が一なんかあったら、同行者として後味悪いだろ」
暗に戻れと言う梨乃にそう反論したのは、もう少し二人きりでいたいという、自分のエゴだった。
「逆に聞くけど、仁科は、俺に出て行ってほしいわけ?……お前がそう言うなら、出てくけど?」
口ではそう強がりながらも、内心では拒絶しないでほしいと、そればかりだった。
理人がベッドに浅く腰をかけても、梨乃は眉を下げ、赤い顔のまま瞳を揺らすだけだった。そっと手を伸ばし、指先で梨乃の頬に触れれば、静かに目を閉じる。
(……クソ、可愛すぎなんだよ…)
気付けば、顔を寄せていた。