治療不可能な恋をした
焦ったように言い切ると、思わず視線を外す。
心拍がわずかに速まっていた。
(……そんな言い方されたら、誤解されるに決まってる…!)
らしくなかった。
落ち着いた対応が取り柄のはずなのに、こんなふうに動揺してしまうのはきっと、あの一夜のせいだ。
強めの口調でそう言い切った梨乃に、白石はぱちぱちと瞬きをしながら、ほんの少しだけ頬を緩めた。
「ああ……いえ、ごめんなさい。なんか変に勘ぐっちゃって」
「いえ……こちらこそ、大きな声出してすみません」
梨乃が軽く頭を下げると、隣の理人がくすりと笑った。
「そんなに全力で否定されると、ちょっと傷つくんだけどな」
「……余計なことを言うからです」
理人の冗談に冷静に返しながらも、梨乃の耳はほんのり熱を持っていた。
そんな二人のやりとりをどこか面白そうに見つめながら、白石はふっと目を細めた。
「そっか……だけど、同期が同じ病院にいるってなんかいいですね。心強くて」
「……そういうものですか?」
梨乃が少し間を置いて問い返すと、白石は頷いた。
「だって、知ってる人がいるだけで安心感あるじゃないですか。悩みも共有しやすいし。逢坂先生もそう思いますよね?」
その言葉に、理人はゆるく笑いながらも、ちらりと梨乃の方を見た。
「そうですね。けど俺は──」
少しだけ言葉を切り、軽く肩をすくめる。
「大学の頃とはちょっと違う仁科が見れたことの方が……面白かったかな」