治療不可能な恋をした
「へえ……なんかいいね、そういうの」
理人がそう言って頷き、軽く笑った。あまりにあっさりとした返答に、肩の力が抜けてしまった。
(自分から話振っておいて適当な……)
「逆に、逢坂先生はどうして心外なんですか」
箸を置きながら、梨乃が問い返す。理人は「うーん」一瞬だけ考えるような素振りを見せたが、すぐに肩をすくめて笑った。
「目立つし、かっこよかったから?」
「……」
梨乃は呆れたように眉を寄せた。
「単純すぎませんか」
「いや、だって当時はそんなもんだろ?外科って響きも強いし、手術って派手で責任重い分、腕が試されるし。ちょうど手先も器用な方だったしね。……まあ、実際しんどいことも多いけど」
「“まあ”で済ませられるのも、すごいですけどね」
「はは、そりゃどうも」
梨乃の真顔に、理人はお茶をひと口飲んでから口元を緩めた。
そして、ふいに少し目を伏せて──
「……っていうかさ」
「?」
「いい加減、敬語やめない? なんか……他人行儀すぎて、落ち着かない」
「……でも…職場の同僚ですし……」
「今は職場じゃないし、同僚以前に俺ら同級生だろ」
理人の声はあくまで柔らかい。それでも、梨乃は答えに詰まる。