治療不可能な恋をした
嘘でも謝る素振りはなく、瞳には不自然な輝きが宿っている。自分の犯した行動に欠片も罪悪感を抱いていないことが、はっきりと伝わってくる。
「理人さん、昔はあんなに優しかったのに……なんでそんなに冷たいんですか……?」
その言葉には、菜々美自身のねじれた理想像が滲んでいるようだった。理人は目を細め、静かに吐き捨てるように言った。
「そんな記憶はない。茉里の同級生として、挨拶程度の関わりしか持たなかったはずだ」
その言葉に、菜々美の表情が一瞬歪む。しかし理人の視線は揺るがず、肩越しに梨乃を守る壁となって立ち続ける。
「……どうして……」
声はか細いのに、そこには抑え込んでいた苛立ちがにじみ出ていた。次の瞬間、こらえきれない感情が一気に噴き出す。
「……どうして、私じゃないんですか?その女だって、私と同じで地味で目立たないはずなのに、どうして……どうして理人さんは私じゃなくて――!」
菜々美の声は震え、しかし叫びはまるで自分の理想を裏切った現実への抗議だった。
「私……ずっと、ずっと待っていたのに……!なのに私は昔から何も変わってない……!理人さんは、理想の完璧な王子様で、冴えない私でも見つけて、見初めてくれる……そんな日が来るって信じてたのに、なのに私は、昔から何も変わってない……!」