治療不可能な恋をした
「今ここでの俺への付き纏いも、警察に通報する。梨乃への嫌がらせや昼間の件も含め、お前のやったことは全て救いようのない犯罪だといい加減理解しろ」
「……っ」
菜々美の目が瞬時に揺れた。理人の声には嘘もためらいもなく、彼女の傲慢さも、梨乃への執着も、すべて通用しないことを突きつけるように冷たく響く。
「それだけじゃねえ。家の力も、人脈も、俺の全てを使って、梨乃に関わるあらゆる場所からお前を排除する。これ以上、俺たちの前に顔を出すことは許さない」
「……っ」
言葉に込められた怒りは、理人の理性を超え、完全に逆鱗に触れていた。菜々美は口をパクパクさせるだけで、もう何も言えない。
「……お前と梨乃が、同じなわけねえだろうが」
冷たく吐き捨てられた言葉に、菜々美は硬直する。理人の視線は揺るがず、ただ一点、梨乃を守る壁となって立っていた。
「自己顕示欲ばかりで、他人を攻撃することで自分の尊厳を守ろうとするお前とは何もかもが違う。梨乃は誰に対しても優しくて、誠実で……そのくせいつだって自分のことは蔑ろにするやつなんだ。──だからこそ俺が、守ってやりたいんだ」
理人の手が梨乃の手を強く握る。菜々美の理想は音を立てて崩れ落ち、ただの現実の冷徹な壁に変わった。
「二度と俺にその顔を見せるな」
その一言で、菜々美は膝から崩れ落ち、執着は音を立てて粉々になった。場に残されたのは冷たい静寂と、守られた梨乃の存在感だけだった。