治療不可能な恋をした
階段を登り小児病棟のフロアに足を踏み入れると、ナースステーションの方から何やら賑やかな笑い声が聞こえてきた。
不思議に思いながら近づいていくと、断片的に聞こえてくる会話に、ふと足が止まる。
「──逢坂先生って、やっぱりいいよね〜!」
その名前を耳にした瞬間、思わず足が止まり、手にしていた記録用紙をぎゅっと握りしめる。
「わかる〜なんかもう、あの人だけ医療ドラマの中から抜けてきたみたいな雰囲気あるし」
「前の病院でも人気ヤバかったらしいよ?」
「マジ?」
「うん。私の友達が前の病院で一緒だったんだけどさ。マジで週替わりで相手がいたって言ってたよ」
「え、どういうこと?」
「彼女ってわけじゃないけど、仲良い女が常にいるって感じ?特定のひとりに絞らないっぽい」
「やば。めちゃくちゃ遊んでない?」
「そりゃあね〜、医者だし、しかも外科医。なにより顔がいい。あの顔で笑われたらそりゃころっと落ちるでしょ」
「あ〜、まあ、分からなくはない。それも含めて惹かれちゃうっていうか」
「マジで“女癖悪い”って言われてたって。本人はケロッとしてたらしいけど」
「へー、一体なに考えてるんだろうね」