治療不可能な恋をした

ソファに並んで寄り添い、二人でテレビを眺めていた時のこと。

流れていたのは特に気を張らずに見られるバラエティ番組で軽快な音楽に合わせて、画面の中では有名観光地の特集が始まった。

「……旅行かあ」

梨乃は何気なく呟き、画面に映る鮮やかな紅葉や、行列のできる名物グルメに目を細めた。梨乃としてはテレビに並んだ文字を読んだだけで、深い意味を込めたつもりはなかった。


「旅行、行くか?」

隣で腕を組んでいた理人が、さりげない調子で問いかけてくる。見ると視線は画面ではなく、梨乃の横顔に向けられていた。

「えっ……いや、行きたいっていうか……ていうか行けるの?」

「1泊2日とかなら予定合わせられるだろ」

そう言って理人はさっとリモコンを取ってテレビの音量を下げ、テーブルの上にノートパソコンを置いた。

まるで「今すぐにでも調べるぞ」と言わんばかりの仕草に、梨乃はくすっと笑ってしまう。

(さすがのフットワークの軽さだな……)

自分はまだ「どうしようかな」とためらうのに、理人はいつだって迷いなく行動する。その真っ直ぐさに、梨乃はまた心を奪われていく。

「行き先はどうする?遊園地でも温泉でもいいし、食べ歩きだってありだ。梨乃の希望は?」

「んー……どれも悩むけど、できればゆっくり過ごしたいかな」

「じゃあもうすぐ行楽シーズンだし、紅葉狩りなんてどうだ?昼間のんびり観光して、夜はホテルでゆっくり過ごすとか」

「あ、うん。それすごく楽しそう」
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