治療不可能な恋をした
駐車場から小径を歩くと、渓谷の自然に溶け込むように建てられたホテルの建物が、木々の間から顔を覗かせていた。
大きなガラス張りのエントランスには、赤や橙に染まる山並みがそのまま映り込み、まるで絵画の中に足を踏み入れたようだった。
「……すごい。建物まで景色の一部みたい」
梨乃は思わず足を止め、息を呑む。理人も横で、ゆるく口元を緩めていた。
「だろ?ここなら、どこにいても紅葉が楽しめる」
理人の声には自然な自信があり、彼自身がこの場所に溶け込んでいるように見えた。
エントランスをくぐると、吹き抜けのロビーに秋の光が優しく降り注ぎ、深い木の梁と暖色を帯びた暖炉が目に飛び込む。
空間全体に温もりが満ちていて、思わず背筋が伸びた。磨き込まれた床の木肌や、手入れの行き届いた観葉植物の緑も、静かに溶け合っている。
「……私、場違いじゃないかな」
梨乃は視線を落とし、自分の服装をそっと確認する。
紅葉散策を意識して動きやすさを優先したカジュアルな格好だが、この空間にはもう少しだけ気を使うべきだったのではと不安がよぎった。
「心配すんな。どんな格好だって梨乃が一番綺麗だよ」
不意に告げられた言葉に、梨乃は思わず息が詰まった。
「……!そ、そんなこと…」
「へえ。梨乃は俺のこと疑うの?」
「う……」