治療不可能な恋をした
真正面からそう言われ、言い返せなくなる。頬を真っ赤に染め、俯くしかなかった。理人は満足そうに目を細めつつも、楽しげに笑みを浮かべている。
フロントへ進むと、スタッフが丁寧な所作で迎えてくれた。
理人は落ち着いた表情のまま手慣れた様子でチェックインを済ませ、高級感あふれるホテルの中でも、彼の存在はむしろ目を引くほど凛として際立っていた。
スタッフや他の客の視線が、何気なく理人に向けられているのに気づき、梨乃の胸がくすぐったく疼く。
その一瞥一瞥が、自分と理人との関係を探っているかのようで、心臓がかすかに跳ねた。
(……やっぱり、かっこいいなあ……)
思わず見惚れていると、理人がふいに梨乃の手を取った。
「荷物は部屋に運んどいてもらえるらしい。せっかくだし、先に外を歩いてみようか」
突然の声に、梨乃はびくりと肩を揺らす。
「う、うん……!」
ぼんやりしていた自分に気づき、慌てて返事をした。
澄んだ空気と金木犀のほのかな香りに包まれ、これから始まる時間への期待が胸の奥で小さく弾むのを感じた。