治療不可能な恋をした
昼休みの食堂は、ざわめきと食器の音に包まれていた。
窓際の長テーブルにはちょうど休憩が重なった数人の医師が集まり、それぞれにサンドイッチやパスタを前にして、他愛のない雑談に花を咲かせている。
梨乃もその一角に座り、スープをすくいながら合間に相槌を打っていた。話題は外来の混雑具合や、当直中のトラブルなど、どこにでもある愚痴混じりの内容だ。
「それにしても、逢坂先生ってさ」
そんな中、ふいに向かいに座っていた白石が言った。
「どこにいても目立ちますよね。今朝外来前に見かけたんですけど、さっそく若手ナース達に囲まれてて。なんか、いつ見ても誰かと話してるイメージありません?」
「あ、それ、私も見ました。人気ですよね〜あの人。なんか芸能人みたいな存在感あるし」
「まあ、顔もいいしね。しかも外科で腕もいいって話ですし、そりゃモテますよ」
軽口が飛び交い、周囲に笑いが広がる。
梨乃は黙ってスープを口に運んだまま、内心だけで小さく息を吐いた。
ふいに「そういえば、」と白石が言って、スマホを取り出した。
「これ、知ってます?たまたま流れてきたんだけど──」
そして、画面をくるりとこちらに向ける。