治療不可能な恋をした
. . 𖥧 𖥧 𖧧
「──以上で、午前のセッションを終了します。午後は、十三時より別会場にてシンポジウムが始まります」
司会者のアナウンスと共に、場内がざわめき始めた。一斉に立ち上がる白衣やスーツ姿の人々が、ざっくばらんに昼休憩へと向かっていく。
梨乃は、その波に乗り切れずにいた。
席を立つタイミングを計りかねて、意味もなく配布資料をそろえたり、ペンをキャップに収め直したりしている。
(……このまま黙って行ってもいいのかな…)
ちらりと隣に目をやると、理人も同じタイミングでこちらに目を向けて、梨乃の心臓が一瞬だけ跳ねる。
「仁科…──」
わずかに身体を理人の方へ傾けかけた、そのときだった。
「逢坂!」
場内の出入口の方から、数人の男性医師たちがこちらへ歩いてきた。その全員に見覚えがあり、大学の同期だったことを思い出す。
彼らは理人の姿を見つけるなり、親しげに手を挙げた。
「逢坂、お前ここにいたのか!」
「久しぶりだな!午前のやつ聴いたよ。相っ変わらずバチバチに仕上げてくるよな」
あっという間に理人の周りは人で囲まれ、姿は見えなくなってしまった。
「お前、午後のシンポジウムも出るだろ?昼のランチョンのついでにお偉いさんと名刺交換しとけよ。R大学の教授がさ、おまえに一度会いたがってるんだよ」
「つかお前、午後どこ張りつく?心外のシンポ見とく?」
「……あー、いや俺は……」
一瞬、理人の声が迷うように揺れる。けれどそれを待たずに、肩を軽く叩かれ、誰かに背中を押されていた。
「──以上で、午前のセッションを終了します。午後は、十三時より別会場にてシンポジウムが始まります」
司会者のアナウンスと共に、場内がざわめき始めた。一斉に立ち上がる白衣やスーツ姿の人々が、ざっくばらんに昼休憩へと向かっていく。
梨乃は、その波に乗り切れずにいた。
席を立つタイミングを計りかねて、意味もなく配布資料をそろえたり、ペンをキャップに収め直したりしている。
(……このまま黙って行ってもいいのかな…)
ちらりと隣に目をやると、理人も同じタイミングでこちらに目を向けて、梨乃の心臓が一瞬だけ跳ねる。
「仁科…──」
わずかに身体を理人の方へ傾けかけた、そのときだった。
「逢坂!」
場内の出入口の方から、数人の男性医師たちがこちらへ歩いてきた。その全員に見覚えがあり、大学の同期だったことを思い出す。
彼らは理人の姿を見つけるなり、親しげに手を挙げた。
「逢坂、お前ここにいたのか!」
「久しぶりだな!午前のやつ聴いたよ。相っ変わらずバチバチに仕上げてくるよな」
あっという間に理人の周りは人で囲まれ、姿は見えなくなってしまった。
「お前、午後のシンポジウムも出るだろ?昼のランチョンのついでにお偉いさんと名刺交換しとけよ。R大学の教授がさ、おまえに一度会いたがってるんだよ」
「つかお前、午後どこ張りつく?心外のシンポ見とく?」
「……あー、いや俺は……」
一瞬、理人の声が迷うように揺れる。けれどそれを待たずに、肩を軽く叩かれ、誰かに背中を押されていた。