治療不可能な恋をした
診察室のドアがノックされ、看護師の声が続いた。
「4歳の佐伯奈々ちゃん、ご案内します」
「どうぞ」と梨乃が応じると、母親に手を引かれた小さな女の子が入ってきた。
「あいさつできるかな?」
母親に促され、奈々は少し恥ずかしそうに顔を上げる。
「……さえきななです」
小さな声だったが、ちゃんと自分の名前を名乗ろうとする姿に、梨乃は自然と笑みを返した。
「こんにちは、奈々ちゃん。ちゃんとお名前言えてえらいね。わたしは小児科の仁科です。それと、こちらは手術をしてくれる逢坂先生」
そう紹介すると、理人が椅子から軽く立ち上がり、にこやかに頭を下げた。
「逢坂です。よろしくね、奈々ちゃん」
「……よろしく……」
母親に抱きつきながらも、奈々はしっかりと返した。
理人はそのまま奈々と視線を合わせ、子どもの高さに合わせて少し膝を折った。
「これから、お腹と胸の音をちょっと聞かせてね。すぐ終わるから怖くないよ」
奈々は不安げな表情を浮かべながら、母親の服の裾をぎゅっと掴んだ。