治療不可能な恋をした
「えっ!逢坂くんっ!?」
「うそ、なんで?」
梨乃の周りの女子たちは概ね予想通りに色めき立った。だが肝心の梨乃は、やはり反応が薄かった。
(……やっぱ、そうだよな)
理人はその様子に半ば納得したような気持ちを抱きつつ、あえて軽い調子で隣に腰を下ろした。
「まずは、卒業おめでとう」
梨乃は少しだけ目を逸らし、硬い表情のまま応じた。
「……逢坂くんも」
その声には普段の冷静さとは違う、ほんのわずかな柔らかさが含まれていた。
「仁科とちゃんと話すの、グループワーク以来だな。あれ、何年の時だったっけ?」
笑みを浮かべて尋ねると、梨乃は一瞬怪訝そうにこちらを見つめ、少し考えるように答えた。
「……三年生のとき、じゃないかな」
「そうだ、循環器の班だったな。あのときの仁科、心エコーの実習で、先生に『きれいに取れてる』って褒められてたよな」
梨乃は目を開き、そして微かに笑みを見せて頷いた。
「覚えてたんだ」
理人は気負いのない笑みを浮かべ、肩をすくめる。
「印象に残ってたから」
梨乃はふっと息をこぼし、二人の間にほんの少しだけ、和やかな空気が漂った。