治療不可能な恋をした
そのあと乾杯が終わり、会も中盤に差し掛かる頃。理人はまだ梨乃の隣にいた。
話しかけるたび、梨乃は最初こそ戸惑った表情を見せていたが、次第に小さな相槌を返し、時には短く笑いもこぼすようになっていた。
「仁科ってさ、飲み会とか全然来ないよな」
「……うん。あんまり得意じゃないから」
「なんで?酒が嫌いとか?」
「そういうのじゃなくて……賑やかなのが、ちょっと苦手なだけ」
梨乃はそう言って、グラスの縁を指先でなぞる。
(……素直なやつだな)
無理に盛り上がろうともしない。かといって、冷たくあしらうわけでもない。理人は、そんな梨乃の反応がどこか心地よく思えていた。
(……意外と、居心地悪くない)
何かにつけて言葉を交わすうちに、梨乃もようやく慣れてきたのか、構えるような表情は次第に薄れていった。
ただ、その目に浮かぶのは、終始どこか不思議そうな色だった。
──なんで、こんなに話しかけてくるんだろう。
梨乃の顔には、明らかにその疑問が抜けきれていなかった。