治療不可能な恋をした
「逢坂ー、ちょっとこっちきて」
振り向けば、最初に一緒に行動していた奴らが手招きをしている。
「ああ、悪い。行ってくるわ」
梨乃は「はい」とだけ小さく返し、ほんのわずかに安心したように目を伏せる。
(……やっぱ、簡単には懐かねえか)
思わず微かに息を漏らし、理人は友人達のもとへと向かった。
「おまえ、仁科さんとなに話してたの?」
「べつに」
笑ってグラスをあおぐと、友人の一人である黒川がニヤニヤと口を挟む。
「ああいう静かな子がタイプなんだ?」
「……さあな」
肩をすくめて受け流す。だが──
「でも、確かに仁科さんって綺麗だよな。高嶺の花って感じ?なんか実家も病院って噂だし」
「なんでそんな事知ってんだよ」
「あー、長谷部がずっと狙ってたっぽいぜ?今日で進路分かれるし、今夜とかワンチャンあるかもな」
「……ふーん…」
いつも通りの涼しい顔であしらう。それでも、胸の奥にチクリと刺さるものがあった。
(ワンチャンって……なんだよ、それ)
グラスを置き、何気ないふうを装って視線を会場に向ける。自然と、さっきまで梨乃がいたテーブルを探していた。