治療不可能な恋をした

「逢坂〜!こっち来ておまえも写真撮ろうぜ」
「あ、理人〜!卒業旅行のことなんだけどさぁ」

気がつけば別の場所から声をかけられ、またひとしきり話に巻き込まれていた。

何度かその場を離れようとしたものの、誰かに呼び止められ、冗談を交わし、また別の会話に捕まる。

けれど、そのたびに気がつくと、視線は同じ場所を探していた。

さっきと変わらない位置で、グラスを手に静かに佇む梨乃の姿。

目が合うことはなかった。それでもただ横顔を見ているだけで、胸の奥に妙な熱がじわりと滲んでくる。

気づけば、会場はすっかり終わりの気配を帯びはじめていた。

「ねえ理人、このあとの二次会なんだけど……」

「悪いけど、俺パス」

あくまで軽く言いながら、さっとグラスを置き、ひと言で会話を切る。

「あ……え?ちょ、理人?」

反応を振り切るように、理人は軽く手を挙げて踵を返した。

向かう先は、ただひとつ。

梨乃のもとだ。


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