お淑やかでか弱いお姫様をお望みでしたら他をあたってください ~正体不明の元メイドは魔王様に自分を攫わせます~
「愛するメアリー。今日という日を迎えるまで、短くも濃い時間を一緒に過ごしてきたな」
(短くて薄い時間でしょ)
 
 「楽しいことばかりではなく、時には辛いこともあった。だが、エミリーが隣にいてくれるだけでどんな困難も乗り越えることができた」
(ルーカス様には、特に困難は降りかからなかったじゃないですか。大変なのは、現在進行形で嫌がらせを受けている私です。あなたは気づいていないでしょうけどね!!!)

「エミリーの笑顔が、俺の毎日の祝福だ。そして、エミリーの存在そのものが、俺にとってかけがえのない宝物に違いない」
(……何が言いたいか分からない。もっと簡潔に言ってくれないかな)
 
「これから先、何十年と時が過ぎ、お互いに年を重ねても、今日誓ったこの気持ちは決して色褪せることはない。どうか俺の隣で、優しく手を取り合い、共に歩んでくれ。永遠に愛している」
(私が暗殺されなければ、ですけどね。永遠は止めてください。迷惑です)

 心の中で総ツッコみを入れながらも、笑顔で返事をする。
 神様に嘘をついて申し訳ないが、人は時に苦渋の決断をしなければならないことをご理解いただきたい。
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