破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
「香代子さんの飲んだ毒がトリカブトだと医師から聞き、それを入手できる女生徒を洗い出しただけです。彼女の父親は漢方医で、トリカブトを薬として使っている医師は組の中では彼だけだった」

 亜蘭は直子の家に行って直子の父親に事情を話し、自首した方が娘のためだと諭したところ、直子は自分がやったと白状したのだという。ちょっと腹痛を起こしてやろうと思っただけだった、それを小百合のせいにして二人を仲違いさせたかっただけ、あんなに苦しむとは思っていなかったと泣きながら言ったのだそう。
 本当に許せない。
 そんな理由で香代子をあんな危険な目に合わせたなんて。

「実は、少し前から学校で物がなくなったり壊されたり、嫌がらせされていると香代子さんから相談を受けていたんです」
「そんなことが……」
 じゃぁもしかして、いつも帰り際に香代子を訪れていたのは、そのことについて話していたの?
「はい。それで、父が学校長と知り合いだったのもあり、生徒の家庭環境について調査をしてもらっていたので、今回すぐに目星をつけられたんです。……そもそも俺が、嫌がらせの時点で犯人を特定できていれば、香代子さんをこんな危険な目に合わせることはなかったんですが……自分の不甲斐なさには本当に嫌気がさしました」
「そんな! 志藤さまのせいじゃありません! すべて直子さんが悪いんです。志藤さまがお気を病む必要はこれっぽっちもないんです。それに、まさか毒を使ってくるなんて誰も思いません」

 そう自分で言ってから、もともと香代子を殺そうと毒を使った張本人は私だけど、と気まずさに襲われたのはここだけの秘密だ。
 あれは、物語の中の話だ。
 ここは、架空の物語でもおとぎ話でもない。私が、香代子が、亜蘭さまが確かに生きている、本当の世界。私は私で、あの物語の中の小百合じゃない。
 自分でも不思議と、確信めいたものを感じた。

 私の怒る剣幕に呆気に取られた亜蘭さまは口をぽかんと開けて私を数秒見つめたあと、「ありがとうございます」と表情をほころばせた。その柔らかな笑顔を見て、私も少しだけほっとできた。

「では、朝食を食べて支度をしたら、香代子さんに会いに行きましょうか」

 という提案に、私は笑顔で頷いた。
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