破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
12話 あなたの特別にしてくれませんか


 中庭は、枯葉がカラカラと音を鳴らしながら転がり、すっかり冬の様相をしていて人はすくない。だから亜蘭さまもすぐに見つけることができた。
 大きな木の下に置かれたベンチに腰掛け、すこし遠くを眺めていた彼はゆっくりとこちらを向いて私を認めるとふっと目元を緩めた。
 それだけで、私の胸がぎゅっと締め付けられてしまう。

「もっとゆっくりお話ししていてもよかったんですよ」

 寒いはずなのに、そんな優しい言葉を放つ彼がとても愛しいと思う。

「あの、少し、お話しても……?」
「もちろん。寒いのでこれを羽織ってください」

 亜蘭さまの隣に座れば、彼は着ていた外套を脱いで私の肩にかけた。

「志藤さまが風邪をひいてしまいます」
 遠慮するも、彼は「俺は寒くないので」と引いてくれないためありがたく外套を胸に引き寄せた。上品な白檀の香りが、冬の冷たい空気にのって鼻先をかすめていった。
 彼の温かさの残る外套は、私が縁側でうたた寝していたときに掛けてくれたのと同じものだった。
「小百合さんが縁側で寝ているのを見たときは、驚きました」
 彼も同じことを思い出したらしく、声音になつかしさが滲んでいるのがわかる。
「もう忘れてください……」
「忘れません。――あなたとの思い出は全部覚えていたいし、忘れたくても忘れられません」
「……っ」
 亜蘭さまも、私と同じ気持ちでいてくれるんだろうか。
 彼の言動の端々に熱をもった甘さを感じるけれど、どこか夢を見ているような未だ信じられない気持ちの方が大きい。
 小百合さん、と彼の声が鼓膜をたたく。私は弾かれたように隣を仰ぎ見た。
 亜蘭さまと視線がかち合う。意を決したような、強い決意が込められていた。
「俺は、あなたのことが好きです」
 飾り気のない真っ直ぐな言葉には、嘘偽りを微塵も感じさせない潔さを纏って私の胸に届いた。ぽちゃんと投げ入れられたそれは、静かだった水面に喜びの波紋を立て、次第に大きな波となって私を揺さぶる。本当なら、今すぐ彼の胸に飛び込んでしまいたい。なのに私は、一歩が踏み切れなかった。

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