破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
こんな私が幸せになってもいいのだろうかと、過去の自分を思い出しては罪悪感に捉われてしまう。
「ど、どうして……私なんでしょうか……。志藤さまもご存じですよね、私はずっと、香代子さんのことが煩わしいと、酷いことをたくさんしてきました。志藤さまのことだってそうです。あなたのお気持ちなど考えることもせず、一方的に気持ちを押し付けて騒いで……」
いくら自分が幼稚で子どもじみてたからといって、許されることではなかった。
「……確かに、以前のあなたは勝気で強引なところがあって、正直対応に困っていました。香代子さんにも強い態度で接していたのを見ると、酷かったとあなたが言うのも嘘ではないのでしょう」
私は過去の記憶を、自分を消し去りたい気持ちでいっぱいになって、膝の上の手をぎゅっと握りしめた。
「――だけど、あなたは変わった。自分の行いを過ちだと認め、謝罪し、そして正した。それは、誰でもできることではない、とても難しいことです」
亜蘭さまは、真正面から私を見つめてそう言った。ゆるぎない眼差しの中にあたたかなぬくもりを感じて、込み上げてくるものがあった。大丈夫だよ、わかってるよ、と言われたみたいで、目の奥がツンとして涙がこぼれそうになる。
私は自分の犯した罪を、傷つけてしまった香代子の心を忘れることなく生きていかなければならない。前世の記憶を思い出し、自分の行いが愚かな過ちだと気付いたとき、そう決めた。やってしまったことは、なかったことにはできないから、これからの自分の行いで信じてもらえるように変わろう、と。
それを、亜蘭さまに見ていてもらえて、さらに信じてもらえたことが、なによりも嬉しかった。
「変わっていくあなたは、とても強くて美しくて、一緒にいればいるほど惹かれていきました」
「あ……、ありがと……っ、ございます……」
とうとう堪えきれなくなって、感謝の言葉と一緒に涙と嗚咽も溢れてしまう。涙を拭こうとした手を掴まれて、代わりに亜蘭さまがハンカチーフでそれをそっと拭ってくれる。
その優しさに溢れた手つきに押されるように、拭いても拭いても涙がこぼれてしまう。それを亜蘭さまはどこか楽しそうに拭いてくれた。
「思えば……、あなたの涙を初めて見たときには、もう心を奪われていたのかもしれません」
亜蘭さまの前で泣いたのは、後にも先にもお見舞いに来てくれたときだけだ。前世の記憶を取り戻して、初恋をあきらめる覚悟をしたあのときただ一度きり。
「あのときも、ハンカチーフを貸してくれましたね」
「女性の涙は武器だ、とよく言ったものです」
「では、志藤さまになにかお願いごとをしたいときは、泣いてしまいましょうか」
「あなたの願いなら、泣かなくとも聞き入れてしまうでしょうね」
「……」
冗談で言ったのに、真面目に返されて反対にやり込められてしまう。ようやく涙が止まり、頬を膨らませる私だったけれど、見つめ返した彼の顔が真剣過ぎて思わず居住まいを正した。
「俺を、あなたの特別にしてくれませんか」
切実な響きに胸を打たれる。止まったはずの涙が、ぽたぽたとまた零れてきて、視界を滲ませた。
「あなたはもう……、ずっと、ずっと前から、とっくに――私の特別な人です……っ」
溢れるのは涙だけじゃない。駄目だ駄目だと抑え込んでいた彼への思いが、溢れて膨れ上がってきて、私は込み上げてくるそれに堪えきれず、思いを伝えた勢いそのままに彼の首ったけに飛びついた。抱きつく寸前に彼の驚いた顔が見えて、少しだけやり返せた気になる。
そして私は、しっかりと抱き留めてくれた彼の腕の中、愛しい人の名を口にした。
――亜蘭さま、と。
ー 終 ー
ーーーーーーーーーーーあとがき
最後まで読んでくださりありがとうございました!
このお話は、和風ファンタジーに出てくる「悪役令嬢」を主人公にしてみようかな?と思いついて書いたお話でした。
時間がなくて(言い訳)事件のあたりさらっとしてしまった感はあるのですが、、、
ヒロイン小百合はもちろん、一途な亜蘭もさばさばした香代子もお気に入りです。
長編の恋愛ファンタジーもございますのでそちらもぜひ!よろしくお願いします。
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「ど、どうして……私なんでしょうか……。志藤さまもご存じですよね、私はずっと、香代子さんのことが煩わしいと、酷いことをたくさんしてきました。志藤さまのことだってそうです。あなたのお気持ちなど考えることもせず、一方的に気持ちを押し付けて騒いで……」
いくら自分が幼稚で子どもじみてたからといって、許されることではなかった。
「……確かに、以前のあなたは勝気で強引なところがあって、正直対応に困っていました。香代子さんにも強い態度で接していたのを見ると、酷かったとあなたが言うのも嘘ではないのでしょう」
私は過去の記憶を、自分を消し去りたい気持ちでいっぱいになって、膝の上の手をぎゅっと握りしめた。
「――だけど、あなたは変わった。自分の行いを過ちだと認め、謝罪し、そして正した。それは、誰でもできることではない、とても難しいことです」
亜蘭さまは、真正面から私を見つめてそう言った。ゆるぎない眼差しの中にあたたかなぬくもりを感じて、込み上げてくるものがあった。大丈夫だよ、わかってるよ、と言われたみたいで、目の奥がツンとして涙がこぼれそうになる。
私は自分の犯した罪を、傷つけてしまった香代子の心を忘れることなく生きていかなければならない。前世の記憶を思い出し、自分の行いが愚かな過ちだと気付いたとき、そう決めた。やってしまったことは、なかったことにはできないから、これからの自分の行いで信じてもらえるように変わろう、と。
それを、亜蘭さまに見ていてもらえて、さらに信じてもらえたことが、なによりも嬉しかった。
「変わっていくあなたは、とても強くて美しくて、一緒にいればいるほど惹かれていきました」
「あ……、ありがと……っ、ございます……」
とうとう堪えきれなくなって、感謝の言葉と一緒に涙と嗚咽も溢れてしまう。涙を拭こうとした手を掴まれて、代わりに亜蘭さまがハンカチーフでそれをそっと拭ってくれる。
その優しさに溢れた手つきに押されるように、拭いても拭いても涙がこぼれてしまう。それを亜蘭さまはどこか楽しそうに拭いてくれた。
「思えば……、あなたの涙を初めて見たときには、もう心を奪われていたのかもしれません」
亜蘭さまの前で泣いたのは、後にも先にもお見舞いに来てくれたときだけだ。前世の記憶を取り戻して、初恋をあきらめる覚悟をしたあのときただ一度きり。
「あのときも、ハンカチーフを貸してくれましたね」
「女性の涙は武器だ、とよく言ったものです」
「では、志藤さまになにかお願いごとをしたいときは、泣いてしまいましょうか」
「あなたの願いなら、泣かなくとも聞き入れてしまうでしょうね」
「……」
冗談で言ったのに、真面目に返されて反対にやり込められてしまう。ようやく涙が止まり、頬を膨らませる私だったけれど、見つめ返した彼の顔が真剣過ぎて思わず居住まいを正した。
「俺を、あなたの特別にしてくれませんか」
切実な響きに胸を打たれる。止まったはずの涙が、ぽたぽたとまた零れてきて、視界を滲ませた。
「あなたはもう……、ずっと、ずっと前から、とっくに――私の特別な人です……っ」
溢れるのは涙だけじゃない。駄目だ駄目だと抑え込んでいた彼への思いが、溢れて膨れ上がってきて、私は込み上げてくるそれに堪えきれず、思いを伝えた勢いそのままに彼の首ったけに飛びついた。抱きつく寸前に彼の驚いた顔が見えて、少しだけやり返せた気になる。
そして私は、しっかりと抱き留めてくれた彼の腕の中、愛しい人の名を口にした。
――亜蘭さま、と。
ー 終 ー
ーーーーーーーーーーーあとがき
最後まで読んでくださりありがとうございました!
このお話は、和風ファンタジーに出てくる「悪役令嬢」を主人公にしてみようかな?と思いついて書いたお話でした。
時間がなくて(言い訳)事件のあたりさらっとしてしまった感はあるのですが、、、
ヒロイン小百合はもちろん、一途な亜蘭もさばさばした香代子もお気に入りです。
長編の恋愛ファンタジーもございますのでそちらもぜひ!よろしくお願いします。
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