破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
5話 まぁ、私が悪いんですけどね!
今日は、亜蘭さまの家庭教師の日で、香代子が小百合に転ばされて足を挫くシーンの日でもある。
私は家庭教師の時間になるまで自室に引きこもってそのときを待っていた。
――なのに、
「きゃぁあっ」
と、悲鳴が耳に飛び込んで来て私は体をびくつかせる。
「えっ……今の、香代子さんの声……」
窓の障子を恐る恐る開けて様子をうかがうと、庭の池の近くで香代子がうずくまっているのが見えた。だけど、香代子のほかに人の姿は見当たらない。
「え、なんで? 私は何もしてないのに、どうして転んでるの?」
しかもご丁寧に転んだ場所も原作通りときた。
偶然だろうけど、ちょっと怖くて変な汗が滲み、私は無意味にブラウスのふりるに手を当てる。
転んだだけなら大丈夫かと思い見守っていたが、彼女は足首をさすり涙を目に浮かべるばかりで立てない様子だった。
「あぁっもう!」
私は仕方なく部屋を出て彼女のもとへと急ぎ足で向かう。
「あっ、小百合さん……!」
「大丈夫ですか?」
「私ったら踏み石に躓いて転んでしまって、足を挫いたようです」
みっともないですわ、と涙を堪える彼女のなんといじらしいことか。
今すぐぎゅっと抱きしめたくなるのを堪えて、私は彼女への足を見ようとその場にかがんだ。
「まぁ、腫れちゃってるわ……誰か人を、」
「――大丈夫ですか、香代子さん」
少しかすれた低い声に、私の心臓が跳ね上がった。
なんてタイミングの悪い……。
振り向くまでもなくヒーロー亜蘭さまの登場だとわかり、私は顔を俯けたまま動けなくなる。
「志藤先生……」
彼は、香代子の側に膝をついて彼女の顔を覗き込み、はっと息を呑む。涙に気付いたのかもしれない。そして、勢いよく私の方を振り向くと、「なにがあったんですか」ときつく言葉を放った。
色素の薄い瞳には、確かに怒りと嫌悪が色濃くにじんでいて、私を疑っていることは一目瞭然だった。
「えっと……」
「お恥ずかしながら、転んで足を挫いてしまいました」
「こんなに腫れて……転んだだけで……?」
あーそうですよね。どうせ私が転ばせたって思っちゃいますよね!
あくまでも私を疑いにかかる亜蘭さまに、だんだんと腹が立ってきてしまい、私は立ち上がって二人から距離を取った。
「あの! 私を疑うのは志藤さまのご勝手ですけど、香代子さんとても痛がってるので、とっとと母屋に運んであげてくださいませんか? 私はその間に医者を呼んでくるよう人を探してきますので!」
目を点にする二人をそこに置いて、私は使用人を探しに向かった。
その間も私の中の怒りは収まらず、漫画なら頭から煙が出ていそうなくらいカッカしながら小走りに屋敷を進んで、見つけた使用人に医者を呼んでくるよう言付けた。
「まぁね、これまでさんざんなことをしてきた私が悪いんですけどね!」
怒りは収まらず、愚痴が口を突いて出るのを止められない。私はプンプンしながらも、桶に水を汲んで手ぬぐいと一緒に母屋へ戻り、香代子の部屋へと向かう。
案の定、部屋では亜蘭さまが所在なさげに佇んで困っている様子だった。
「今、医者を呼びにいかせたので、もう少し待ってくださいね」
「あ、小百合さん、ごめんなさい」
「っ、」
「腫れてるので冷やそうと思って水を汲んできました」
何か言いたげな亜蘭さまを無視して私は香代子さんの手当を進めた。
「何から何までありがとうございます。自分でやりますから」
「だめです、無理に動いて悪化したら困ります。任せてください」
「申し訳ないけど……お願いします」
今日は、亜蘭さまの家庭教師の日で、香代子が小百合に転ばされて足を挫くシーンの日でもある。
私は家庭教師の時間になるまで自室に引きこもってそのときを待っていた。
――なのに、
「きゃぁあっ」
と、悲鳴が耳に飛び込んで来て私は体をびくつかせる。
「えっ……今の、香代子さんの声……」
窓の障子を恐る恐る開けて様子をうかがうと、庭の池の近くで香代子がうずくまっているのが見えた。だけど、香代子のほかに人の姿は見当たらない。
「え、なんで? 私は何もしてないのに、どうして転んでるの?」
しかもご丁寧に転んだ場所も原作通りときた。
偶然だろうけど、ちょっと怖くて変な汗が滲み、私は無意味にブラウスのふりるに手を当てる。
転んだだけなら大丈夫かと思い見守っていたが、彼女は足首をさすり涙を目に浮かべるばかりで立てない様子だった。
「あぁっもう!」
私は仕方なく部屋を出て彼女のもとへと急ぎ足で向かう。
「あっ、小百合さん……!」
「大丈夫ですか?」
「私ったら踏み石に躓いて転んでしまって、足を挫いたようです」
みっともないですわ、と涙を堪える彼女のなんといじらしいことか。
今すぐぎゅっと抱きしめたくなるのを堪えて、私は彼女への足を見ようとその場にかがんだ。
「まぁ、腫れちゃってるわ……誰か人を、」
「――大丈夫ですか、香代子さん」
少しかすれた低い声に、私の心臓が跳ね上がった。
なんてタイミングの悪い……。
振り向くまでもなくヒーロー亜蘭さまの登場だとわかり、私は顔を俯けたまま動けなくなる。
「志藤先生……」
彼は、香代子の側に膝をついて彼女の顔を覗き込み、はっと息を呑む。涙に気付いたのかもしれない。そして、勢いよく私の方を振り向くと、「なにがあったんですか」ときつく言葉を放った。
色素の薄い瞳には、確かに怒りと嫌悪が色濃くにじんでいて、私を疑っていることは一目瞭然だった。
「えっと……」
「お恥ずかしながら、転んで足を挫いてしまいました」
「こんなに腫れて……転んだだけで……?」
あーそうですよね。どうせ私が転ばせたって思っちゃいますよね!
あくまでも私を疑いにかかる亜蘭さまに、だんだんと腹が立ってきてしまい、私は立ち上がって二人から距離を取った。
「あの! 私を疑うのは志藤さまのご勝手ですけど、香代子さんとても痛がってるので、とっとと母屋に運んであげてくださいませんか? 私はその間に医者を呼んでくるよう人を探してきますので!」
目を点にする二人をそこに置いて、私は使用人を探しに向かった。
その間も私の中の怒りは収まらず、漫画なら頭から煙が出ていそうなくらいカッカしながら小走りに屋敷を進んで、見つけた使用人に医者を呼んでくるよう言付けた。
「まぁね、これまでさんざんなことをしてきた私が悪いんですけどね!」
怒りは収まらず、愚痴が口を突いて出るのを止められない。私はプンプンしながらも、桶に水を汲んで手ぬぐいと一緒に母屋へ戻り、香代子の部屋へと向かう。
案の定、部屋では亜蘭さまが所在なさげに佇んで困っている様子だった。
「今、医者を呼びにいかせたので、もう少し待ってくださいね」
「あ、小百合さん、ごめんなさい」
「っ、」
「腫れてるので冷やそうと思って水を汲んできました」
何か言いたげな亜蘭さまを無視して私は香代子さんの手当を進めた。
「何から何までありがとうございます。自分でやりますから」
「だめです、無理に動いて悪化したら困ります。任せてください」
「申し訳ないけど……お願いします」