完璧すぎる淑女は「可愛げがない」という理由で婚約破棄されました。 ~元聖女ですが、古代魔術まで極めてみました~
 数週間の旅路を経て、エメラルダは無事に東の辺境伯領にたどり着いた。穏やかな雰囲気のそこは、子どもの笑い声が元気に響いている。

「辺境拍の屋敷に向かってください」
「はい、お嬢様」

 エメラルダは御者に指示を出し、ゆっくりと馬車を進めさせた。止まったのは、辺境伯の屋敷の門前。荷物を持って降りた彼女は、御者を見送り、静かに屋敷を見上げた。

(光たちに教えてもらったのは、ここ。とりあえず、辺境伯に挨拶をして、そのまま≪古代魔術の探狂者≫について聞いてみようかしら)

 屋敷の扉を叩くと、現れたのは、質素な身なりの執事だった。エメラルダは挨拶を済ませると、辺境伯に会いたいと申し出た。

「おやおや、この辺りでは見ない方ですね」
「失礼しています。私は、エメラルダ・ヴァインベルクと申します。人を探している中でして、辺境伯様にご挨拶とお尋ねをしたく寄らせていただきました」
「そうでしたか。辺境伯様は、仕事で多忙を極めております。挨拶は私からお伝えさせていただきますし、人探しでしたら私がお答えさせていただきます」

 執事は、警戒するようにエメラルダを見つめた。その時、執事の後ろから、落ち着いた声が聞こえてきた。

「構わん、トーマス。通して差し上げてくれ」

 声の主は、1人の男だった。 エメラルダよりも若干年上であるように感じるものの、確固たる強さと聡明さが見て取れた。灰色の瞳が、スッと細められる。

(この人が、)

 エメラルダは再度お辞儀をする。

「改めまして、エメラルダ・ヴァインベルクと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。俺は、アルベルド・エルダンジュ。この辺りの治めている辺境伯です」

 アルベルトは、エメラルダと握手を交わす。そして、何かを察したのか、奥の応接室へと彼女を招き入れた。
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