完璧すぎる淑女は「可愛げがない」という理由で婚約破棄されました。 ~元聖女ですが、古代魔術まで極めてみました~
 そして、両者腰を下ろすと、早速アルベルトは口を開いた。

「王都の聖女様が、わざわざこんな辺境までお越しになるとは。一体、どのようなご用件でしょうか?」
「聖女様だなんてご冗談を。その様子ですと、婚約破棄の件もご存じなのでしょう?」
「ははっ、噂には聞いていましたが、本当にお強い方ですね。淑女としての品格は勿論、実力もセンスもあるなんて驚かされます」
「…噂、ですか」
「古代魔術の新たな使い手__≪祝福の魔女≫が誕生したと一報を受けましたので」

 その言葉と共に、アルベルトの周囲に一気に泡が飛ぶ。エメラルダは目を見張るも、アルベルトは薄く笑うだけ。

「まさか、」
「俺のことを探しに来たんでしょう?≪祝福の魔女≫様」

 泡からは楽器のような音が聞こえる。
 エメラルダは驚いた。辺境伯なら古代魔術の使い手の居場所について知っていると思ったが、まさかその張本人だったとは。

「遠路はるばる来てくださったんです。立場なんて気にせず、一旦話は全て聞きましょう」
「……本当に?」
「俺に答えられることなら、ですけどね」
「でしたら……私に古代魔術をご教授願えませんか?」

 エメラルダの言葉に、アルベルトは驚きを隠せないようだった。しかし、その目は面白いものを見つけたように揺れている。

「……ちなみにどこで古代魔術を身に付けたんですか?」
「家の古書庫です。昔は各国と貿易をしていた家系でしたので、その中に紛れていたようです」
「偶然それを見つけた、と?本当に?古代魔術の魔術書なんて、最高難度でしょうに」
「……鋭いですね」

 エメラルダが呟くと、アルベルトは豪快に笑う。何だってこんなに鋭いんだ。変に丸め込まれないし、発言の細部もしっかり掬ってくる、と心の中でエメラルダが呟いていることさえも見透かしてそうだ。
< 11 / 21 >

この作品をシェア

pagetop