長い春の先にあったのは
仁くんの想い(藍side)
横に目をやれば夜景。少し下に目を向ければ見たことのない豪華な料理。そして前を見れば、ちょっと得意げな顔をした仁くんがいる。

「料理、うまいな」

そう言いながら仁くんが料理を口に運ぶ。私も頷きながらお肉を口に運んだ。料理も持ってきてくれた時、ウェイターさんが料理名や説明を色々としてくれたはずだけど、もう何を言われたのか覚えていない。ただ、食べている料理はおいしい。

評判通り夜景は綺麗だ。こんなところでデートをするのは思えば初めてだ。いつもデートといえば映画を観に行ったり、カラオケやドライブ。おしゃれなカフェやレストランよりも、定食屋やラーメンなどを食べに行くことが多かった。お互い、おしゃれなところは気を使うからと避けていた。

「……ずっと寂しい思いをさせてごめんな。しばらくはゆっくりできるだろうから」

仁くんが真っ直ぐ私を見見ながら言う。私はナイフとフォークを置き、「別に気にしてないよ」と笑みを使った。確かに寂しい気持ちはあったけど、今では何も感じていないから。
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