長い春の先にあったのは
メインディッシュを食べ終えた頃、ウェイターがデザートを運んでくる。レストランにお願いして作ってもらったデザートだ。お詫びの印になるかわからないが、藍の好きなアイスケーキを用意してもらった。

「わぁ……!」

藍の瞳が星のように煌めく。大好物を目の前に声を出すなんて、まるで小さな子どもみたいで可愛い。思わず笑ってしまった。

「お前、アイスケーキ本当に好きなんだな」

「うん。大好きだよ」

アイスケーキを一口食べた藍は幸せそうな顔を見せてくれた。その顔を見て、少しホッとする。事件が解決する前、八つ当たりしてしまったからな……。

(藍が食べ終わったら、これを渡さないとな)

スーツのポケットに入れてある指輪に触れる。あの言葉を言うと思うだけで緊張し、胸の鼓動が早まった。顔に熱が集まっていく。

アイスケーキを食べ終えた藍は、心配したように声をかけてきた。医者だから体調の変化には敏感なんだろう。

「仁くん、どうしたの?体調悪い?」

「いや……元気だよ……。ただちょっと……緊張してな……」

顔を上げて藍を見つめる。言うなら今しかないと思った。スーツのポケットから指輪を取り出す。

「俺、お前と家族になりたい。結婚してほしい」

箱を開ければそこにはダイヤモンドの指輪がある。藍の目が大きく見開かれた。

「……は?」

その口から発せられたのは、あまりにも低い声だった。
< 38 / 44 >

この作品をシェア

pagetop