長い春の先にあったのは
藍は泣いていた。俺の目の前で、大きな瞳から涙を流していた。でも俺が手を伸ばして拭う前に、藍は乱暴に自身の涙を拭っていた。

「私たち、一緒にいない方がいいんだよ。一緒にいたらまたきっとこうやって何度もぶつかり合う。私、もう疲れちゃった。だからさよなら。……ドレスはまた返すから」

振り返ることなく藍はレストランを去っていく。もう追いかけようとは思えなかった。力無くその場にその場に崩れ落ちる。愛していた藍を、俺は知らないうちにたくさん傷付けていた。そして、今までそれに気付いていなかった。

「藍……」

渡すはずだった指輪が虚しく輝く。もしも藍を傷付けることがなければ、今頃幸せな気持ちで藍を抱き締めていたかもしれない。ハッピーエンドを頭の中で妄想するなんて、あまりにも虚しすぎる。でも、止めることができない。

お互い幸せでいっぱいのままこのホテルに泊まって、互いの両親に挨拶をして、結婚式や新居の相談をして、永遠の愛を誓って、子どもができてーーー。

「そんな未来を作りたかっただけなのに!」

現実はあまりにも苦い。俺の頰を涙が伝った。
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