転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
 ルリアンがバーガーの包み紙をまとめ始め、他のメンバーも手伝う。もう終わりの時間だ。もうすぐ夜になる。

 俺は、皆に気づかれないようにそっとラビッツに耳打ちした。

「ラビッツ、このあと少しだけ時間あるかな」
「? いいわよ」

 夕焼けに照らされた頬はほんのり赤く染まっていて、どこか色っぽい。髪に残る水滴が光を受けてきらめいている。

「来年も誰かクラゲを量産してくれないかなー」
「私もそう思っちゃうわね」

 皆と笑い合いながら、俺たちは帰路へとついた。

 ◆

 寮の手前でラビッツと二人で道を外れる。辺りはすっかり暗くなってしまった。

「それで、どうしたの?」
「ものすごく待たせてごめん」

 ポケットから小袋を取り出す。中には手作りのビーズの指輪。

「納得いくのが、なかなか出来なくてさ」
「そうかなって思ってたわ。はめて?」
「あ、ああ」

 躊躇いもなく左手を出してくれるラビッツに胸が高鳴る。

「……すごい。フラワーリングね」

 赤とピンクのコスモスを模した小さな花の輪が、ラビッツの薬指を彩る。

「これ以外に、練習でいくつ作ったの?」
「え」
「知りたいんだけど」
「んっと、じゅっ……いや、はち、いや、ろ、ろくくらいかな……」

 つい引かれるかなと少なく告げてしまう。

「やっぱりね。ニコラらしい。でも、思った以上だわ。それも全部ちょうだい」
「いやいや、もうこれがベストだから。他はなかったことにしよう」
「……思念品になっちゃうかもしれないわよ?」

 否定はできない。ラビッツにつけてほしいと心を込めながら作っていた。

「大丈夫だ。そうなっても、いつかは消える」

 誰の記憶にも残らなくなれば。

「可哀想じゃない。使い倒してあげるわよ」
「ええー……」
「それから、私からも」

 ラビッツが鞄の中からフェルト人形を取り出した。

「三つもある!?」

 俺っぽい人形とラビッツっぽい人形と、ウサギ人形だ。

「ニコラが全然指輪をくれないから、待ちくたびれて三つも作っちゃったのよ」
「すみませんでした……」
「いいわよ。う、嬉しかったし。それに、私も指輪と交換で渡したかったから。途中からは出来上がるまで待っててって気分になったわ」
「そ、そっか」

 俺の指輪と同様に、作るたびに上達しているのが分かる。たぶん、ウサギを最初に作ったんだろうな。

< 104 / 105 >

この作品をシェア

pagetop