転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「ほんとはさ、出来上がったら初デートの約束をして、その日に渡そうと思ったんだ」
「初デートは、この前の夜の空中ドライブでしょ。違うの?」
「あ、そうだな。確かにそうだ。えーっと、二回目のデートで渡そうと思ったけど、あまりにも待たせたから早い方がいいかと思ってさ」
「そうね。忘れられたのかなって少し心配になったわ」
「ごめん」
「……三つも作ったんだから、指輪もたくさんちょうだいね」
「分かったよ」

 ラビッツが薬指に光る花を眺め、ふっと微笑んだ。その笑顔だけで、今日までの全部が報われた気がした。

 ――恋ってすごいんだな。

 相手の喜ぶ顔だけで幸せになれる。

「じゃ、帰るか」
「……ええ」

 並んで歩き出すと、互いの指が当たった。それだけ近い距離を並んで歩くようになった。そっと握っても離されない。

 そして、ふと思い出す。
 ラビッツにムードづくりをしろと言われていたことを。

 互いのプレゼントを贈り合ってすらいいムードになれなかったのなら、結婚するまでこれ以上進展しないんじゃないのか!?

 いい雰囲気にしないと、と思った瞬間から突然焦りだす。

「ララララララ、ラビッツ」
「突然歌い出して、どうしたのよ」

 このままだと、寮へと辿り着いてしまう。しかし、いい台詞は何も思い浮かばない。

 ムードってどうやって作るんだ!? ラビッツは既に呆れ顔だぞ!

「ニコラ?」
「えっと、あー、うー、た、たくさん指輪を作った俺に免じて、目をつむってください!」

 訳の分からない言い回しをしてしまった! ああっ、しかめっ面で睨まれてしまっている! だんだんと無表情になり――、

「はい。閉じたけど?」

 なんだと!?
 閉じた!?
 ど、どうしたらいいんだ。
 キスしてもいいのか!?

 ドキドキしながら顔を寄せる。唇まであと数センチ。胸の奥で心臓が跳ねる。耳まで熱くなる。そのぷっくらした唇が、鮮明に目に入る。手のひらは汗ばんで、息が乱れて。

 頭の中で「本当にいいのか?」と自問自答し続ける。あと少し。ほんのわずか。

「おそいっ」

 間近でラビッツが目を開くと、ふわっと俺の唇に彼女の唇がかすめた。

「もうもうっ。したいなら、さっきのいいムードだった時にしなさいよ!」

 えええ!?
 それはいつだ!?

「だ、大サービスなんだからねっ! 指輪くれたからなんだからっ。次はちゃんといい雰囲気にしてよね!」
「ま、待ってくれ。なんで涙目なんだ」
「恥ずかしいからに決まってるでしょ! このバカぁ! もう行くから!」
「あ、その前に!」
「なによっ」
「えっと、デートの場所はどこがいい?」
「ニコラが決めた場所がいいの! もう今度こそ行くんだから!」

 パタパタとラビッツが寮の方へと走り去っていく。本格的に俺は、ムードづくりについて考えた方がいいのかもしれない。

 恋人がいる男って大変だな!?

 そう思いながらもニヤけてしまうのは、仕方ないだろう。俺は今日、寝るまでニヤけている自信がある。

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