転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「君自身がトップに立つことを認めさせるため、血の滲むような鍛錬をしていることも知っている。成績も優秀。剣技もまた模範授業でお手本として選ばれるくらいの使い手だ。組織のトップは、クリストフ家の伝統を象徴する存在である必要もあるからね、模範となる振る舞いが求められる。君が君らしく好戦的で好き勝手振る舞えるのは妹の前でだけだ」
「…………」
「君なりに妹に甘えてもいた。八つ当たりできる相手は、妹しかいないからね」

 しばらくワナワナ震えていたものの、ふっとラグナシアが脱力した。拳を握っていた力もほどけたようだ。

「気味の悪い存在ね、王子って。気分が悪いわ」
「だろうな。あの家から逃れて生きていける妹のことが、羨ましいんだろう」
「……そうよ。不義の子だと蔑まれて追い出されて、それが幸せだって気づいていないのが妬ましくて仕方がないの。手紙がきたわ。私を支えたいから国に戻るって。いい迷惑よ。視界に入れたくないの」
「……ラグナ姉様……」
「だって……っ」

 ラグナシアの足元に涙がぽたぽたと落ちる。ベル子の雪解けの水と交わって境界がなくなる。

「違う場所であんな家とは無関係に暮らしてほしいのに、ムカつくじゃない! 何も知らずにのんきにしてるのもムカつくの! 私の目が届かないところで……楽しく過ごしなさいよ。私はあの家で皆に認めさせてやるんだから。私がトップに相応しいんだって、思わせてやるんだから」

 二人ともが逃げ出せるなら、きっと上手くいくのだろう。でも、彼女はそれを望まない。いずれ、あの家の頂点に立つことを目指している。そして……ベル子を見れば、幸せになってほしい気持ちと妬ましさが交錯する。

 ゲームでは、リュークも交えたイベントにより互いの気持ちを察し合い、それぞれの道を歩もうと。互いに幸せを祈り合いながら別の道を辿るという選択をしていた。

「姉様、何も知らなくて……ごめんなさい」
「ベルジェ、あなたには知ってほしくなかった。ニコラ王子……恨むわよ」
「ああ、それでいい。俺は別の可能性を見たいんだ」
「どういう意味よ」
「君はいつか、あの家の頂点に立つだろう」
「……そのつもりよ」
「その時に、仲のいい姉妹に戻れる。そんな未来を信じたい。そのために君の事情を伝えることは必要だったと、自分勝手にも思っている」

 自嘲するように、彼女がフッと笑った。

「……まったく。どこまで見透かしているのよ」

 ゲームで知っているなんて、裏技もいいところだよな。仲がよかった幼い頃の彼女たちの思い出の一部を、知ってしまっている。

 離れに隔離されていたベル子を誘い出して、一緒に広い庭で秘密基地なんてつくっていた。そんな日々があったことを。

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