転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「だから、今日は少し意外だった。いきなりあんことするとは思わなかった」
「ははっ。思いついちゃったからな。目立って悪かったよ」

 明らかに嫉妬されて、気持ちが盛り上がってしまった。

「私も楽しかった!」
「え?」
「ふふっ。さっきからね、笑いたくて仕方なかったの」

 口元がずっと緩んでいたのは、そのせいか?

「お姫様抱っこであんたが走ってる時の皆のあの表情、思い出すと笑っちゃう」
「まぁな」
「皆びっくりして、すっごい顔してたわね」
「だな。確かに思い出すと笑えてくるな」
「ほんとよ。交流会でいきなりお姫様抱っこって……ふふっ、皆びっくりするに決まってるわよね」
「だよな。さらいに来たわけじゃないしな」
「見てる方は意味分からないわよね」
 
 互いにこらえきれず、声にして笑う。つられるように肩を揺らして吹き出してしまう。

 確かに、足の痛みは大したことないようだ。ラビッツの足どりも軽い。旧校舎の階段を上り――。

「やっぱり開いてるな」

 キィと屋上への扉を開く。

 この世界には魔法がある。屋上から落ちても、大怪我はしない。杖のような媒介物がないとコントロールはしにくいものの、かすり傷程度だろう。だから、屋上自体には入れることが多い。

 屋上の一画だけは鍵付きの鉄柵で頑丈にバリケードされている。中にあるBOXは発電システムだ。前世のように大きな発電所は存在しない。施設ごとに魔法を使用した小さな発電システムがあり、ケーブルによって各部屋へと供給されている。

 昔はそれが屋上ではなく地上にあったものの、事故が多発し今は家人の許可なく点検できるように屋上にある。人が空を飛べるからな。異常な発熱や魔力異常がないか、巡回点検されている。

 ――ここでも、事故があった。

 ラビッツは屋上の柵に近づき、風を顔に受けながら静かに目を細めた。

「いい景色ね」

 少しだけ感傷的な声だ。

「ああ、学園が一望できる」
「湖もね。すごく綺麗」

 風が彼女の髪をサラサラと揺らすたびになぜかドキドキして――、特別な魔法にかけられた気分だ。

「話が、したかったんだよな。聞きたいことがあるのか?」
「あ……うん。昨日のダンスをした場所、顧問に聞いたって言ってたじゃない?」
「ああ」

 ダンスのいい練習場所を顧問に聞いたから付き合ってほしいと頼んだものの、それ以上は何も言ってない。

「他に、どんな話をしたのかなって気になって」
「そう、だな」

 俺と二人きりになりたかったのは、それを聞きたかったからか。

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