転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
 そして、やはり女子のは凝っている。俺のが女子に渡らならなくてよかった。そうなったら申し訳なさすぎる。 

「ノクス君、俺のは見なかったことにしてくれ」
「え、いえいえ、自分の刺繍に比べれば」
「すごく上手いよ。俺のは……ネタに走ってしまったんだ」
「光栄です。ニコラ様のキーホルダー、好きですよ。鞄につけますね」
「つけなくていいよ!?」
「はははっ」

 冗談なのかどっちなんだ!?

 って、あー! 鞄に本当につけてる! 生徒会長のがボトルの刺繍ハンカチだと分かっていれば、俺もボトルの木彫りにしたのに。

 俺の名字はスタッドボルトだからな。ボルトの木彫りキーホルダーだ。我ながら上手いこと考えたと思ったものの……恥ずかしいな。なんでこのゲームの製作者はこんな名前にしたんだろうな? 設定資料集には書いてなかったんだよな。

「あれ、こっちに向かって来る生徒がいるな」
「早い生徒は早いですからね。ところで、ニコラ様。もしお時間があればですが――、」
「いいよ、やるよ」
「え?」
「早くボトルの持ち主を見つけられたからね。時間が余っている。探しにくいところに隠れているボトルを見つけやすいところに移動させてほしいんだろう?」
「は、はい。その通りです。すごい……ですね。まさか先を読まれているとは」

 やっぱりな。
 ゲームでも、さっさと持ち主が見つかってしまったばっかりに、生徒会長に手伝わされたんだよーとリュークに訴えていた。普段は、生徒会の他のメンバーが自分たちのボトルの持ち主を見つけ次第行っている。

 翌日までに見つからなかったボトルの在処は、顧問がひっそりと学園長に伝え、生徒会が案内をしている。生徒会側からすると、『どういう方法か分からないけれど、見つからない場合は学園長が翌日に教えてくれる』という認識なのだろう。

「隠れているのを探すのも楽しいからな。これは絶対に見つからないだろうってボトルだけを移動させるよ。……それから、明日の朝も一度声をかける」
「ありがとうございます! そうですね、探すのも楽しいので、見回りリストをお渡ししておきます。あ、一日中じゃなくていいですからね。無理のない範囲でお願いします」
「そうするさ」
「こちらの用紙はまだあるので、返さなくても結構です」
「分かった」

 なるほど。
 リストを見ると、確かに見つけにくいところが列挙されている。発電装置と鉄柵の間の看板の裏側、ジョウロの中、どこかの窓が開いていた場合に校舎に入り込んでいるので学生たちの会話に注意、寮の屋根の上、木の上もか……。横に追記された年が書かれている。おそらく、過去に翌日の朝まで見つからなかったボトルの在処のリストだろう。

「じゃ、俺たちは行くよ」

 後ろに並んだ生徒にも愛想笑いを向けつつ、立ち去る。

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