転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「まずは、ラグナシアのボトルを返却に行くさ。そのあとは一緒にトラを探すつもりだが、ニコラたちは何しに来たんだ?」
「あー、ものすごく探しにくいところにあるボトルを助け出す手伝いをしてる。生徒会長に頼まれたんだ。木の上とか見てみるさ」
「なるほどな、お疲れ様」
リュークが軽く手を振り、ラグナシアは無言のまま視線をこちらに向ける。俺たちも手を振り返すと、小道をゆっくりと戻っていった。二人の背中が、少しずつ遠ざかっていく。
――ゲームとは、やっぱり違うんだな。
宝物を見せて言葉を交わして、少しだけ心が近づく。リュークとラグナシアの関係は、まだ距離があるようにも見えるけど……ボトルをきっかけにゲームとは違って仲のいい友人になるのかもしれない。それ以上の関係になる可能性だってある。
俺はここで、生きているんだな。
「……不思議ね」
ラビッツがぽつりと呟く。
「知ってるはずの世界なのに、まるで違う場所のようだわ」
「……そうだな」
俺の目を見て、ふっと笑った。
「さ、私たちも行きましょ。ボトルを助けに」
その笑顔のやわらかさに、何も言えなくなってただ頷いた。
――この時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを思うなんて、前世の俺にはなかった感情だ。でも今は、ラビッツと並んで歩くこの瞬間が何よりも大切に思える。
俺はそっと前に手をかざした。
風が止んだような気がする。湖畔の空気が、静かに張り詰める。指先に意識を集中すると、自分の中に眠る何かが目覚めるような感覚が広がっていく。
――人の願いは光となって空に還る。
女神に祝福された王家の血を引く者は、冬になると夢結びの儀において媒介となって人々の願いを空へと導く。
けれど、今は春。
ボトルに大きな願いが込められているわけでもない。
でも、これまでの生徒たちの記憶は、確かにそこに宿っている。
俺の手のひらに灯る淡い光に呼応するように、光が辺りでふわりと高く舞い上がった。ラビッツが隣で息を呑むのが分かる。
不思議だな。
なぜか、できる気がしたんだ。
「今のって……」
手を下ろした。
さっきの光の場所は覚えている。見つけやすい場所に移動しておかないとな。
「ゲームのニコラはどうやって手伝ったんだろうな。分からないけど――」
そっとラビッツの頬に触れた。
「やりたいことがあるんだ。午後に一度、抜けていいかな」
「……内容は内緒?」
「ああ。許可をもらえたら、一緒に来て欲しい」
彼女はため息をついて、俺の瞳を見つめた。
「分かったわよ。婚約者を放っといて何をするのかは分からないけど、期待してあげる」
ラビッツとの会話にくすぐったさを感じるようになったのは、いつからだったか。
「ありがとな。じゃ、さっき光が立ち昇ったボトルを、木の上から降ろそう」
そっと繋いだ手は、ボトルを見つけるまで離されなかった。ラビッツは……挙動不審になっていたけどな。
「あー、ものすごく探しにくいところにあるボトルを助け出す手伝いをしてる。生徒会長に頼まれたんだ。木の上とか見てみるさ」
「なるほどな、お疲れ様」
リュークが軽く手を振り、ラグナシアは無言のまま視線をこちらに向ける。俺たちも手を振り返すと、小道をゆっくりと戻っていった。二人の背中が、少しずつ遠ざかっていく。
――ゲームとは、やっぱり違うんだな。
宝物を見せて言葉を交わして、少しだけ心が近づく。リュークとラグナシアの関係は、まだ距離があるようにも見えるけど……ボトルをきっかけにゲームとは違って仲のいい友人になるのかもしれない。それ以上の関係になる可能性だってある。
俺はここで、生きているんだな。
「……不思議ね」
ラビッツがぽつりと呟く。
「知ってるはずの世界なのに、まるで違う場所のようだわ」
「……そうだな」
俺の目を見て、ふっと笑った。
「さ、私たちも行きましょ。ボトルを助けに」
その笑顔のやわらかさに、何も言えなくなってただ頷いた。
――この時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを思うなんて、前世の俺にはなかった感情だ。でも今は、ラビッツと並んで歩くこの瞬間が何よりも大切に思える。
俺はそっと前に手をかざした。
風が止んだような気がする。湖畔の空気が、静かに張り詰める。指先に意識を集中すると、自分の中に眠る何かが目覚めるような感覚が広がっていく。
――人の願いは光となって空に還る。
女神に祝福された王家の血を引く者は、冬になると夢結びの儀において媒介となって人々の願いを空へと導く。
けれど、今は春。
ボトルに大きな願いが込められているわけでもない。
でも、これまでの生徒たちの記憶は、確かにそこに宿っている。
俺の手のひらに灯る淡い光に呼応するように、光が辺りでふわりと高く舞い上がった。ラビッツが隣で息を呑むのが分かる。
不思議だな。
なぜか、できる気がしたんだ。
「今のって……」
手を下ろした。
さっきの光の場所は覚えている。見つけやすい場所に移動しておかないとな。
「ゲームのニコラはどうやって手伝ったんだろうな。分からないけど――」
そっとラビッツの頬に触れた。
「やりたいことがあるんだ。午後に一度、抜けていいかな」
「……内容は内緒?」
「ああ。許可をもらえたら、一緒に来て欲しい」
彼女はため息をついて、俺の瞳を見つめた。
「分かったわよ。婚約者を放っといて何をするのかは分からないけど、期待してあげる」
ラビッツとの会話にくすぐったさを感じるようになったのは、いつからだったか。
「ありがとな。じゃ、さっき光が立ち昇ったボトルを、木の上から降ろそう」
そっと繋いだ手は、ボトルを見つけるまで離されなかった。ラビッツは……挙動不審になっていたけどな。