転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「じゃ、びゅんびゅん行っくぜー!」
「わわっ」

 ニコラが覚えていたらしい場所へと急降下していく。

「速いわよ!」
「えーっ。だってほら、飛ばした方がラビッツがくっついてくれるじゃん?」

 そんな悪戯っ子みたいな顔して……。かっこよく決めてほしい気持ちと、こんなニコラも可愛くて好きだなんて気持ちがせめぎ合う。

「子供っぽい」
「そんなこと言うなよぅ」

 すねたような顔をしながら木の上に引っかかっているボトルを取ると、地上へ降り立ち木の下へと置いた。

 もう一度ひょいと杖に飛び乗り、私がしがみつくと待っていたように次のボトルへと向かう。

「うーん、こっちのボトルは頑張れば見つけられるな」
「そうね。見つけたボトルの場所を書き込んでいくわね」
「よろしくな」

 夜空を滑るように移動しながら、ニコラの記憶を元に次々とボトルを見つけていく。

 風が頬を撫でるたびに、熱気が少しずつ抜けていくようだ。空気は澄んでいて、星の瞬きが近く感じた。

「ラビッツ、いい匂いだな」
「えっ?」
「さっきからドキドキする」
「も……もうっ。そんなこと言われたら掴まりにくい」
「ははっ」

 こうやって私だけが意識しているわけじゃないって思わせてくるのに。それなのに、彼はいつも通りだ。軽い口調で笑うだけ。

 ――ずるい。

 べ、別にね?
 突然キスされても困るんだけどね?

「次は……あの木の根元か。ベンチに挟まれて死角になっているな。降りるよ」

 静かに着地する。
 ボトルを拾い上げ、少しずれたところに置くと、私はマップに書き込む。ペンを走らせる音が夜の静けさの中に響いた。

「これで終わりだな」
「そうね」
「やっと落ち着いて空のドライブができる」

 いつも通りの彼の悪戯っぽい笑み。でも、私への愛がこもってるって分かってる。すごく瞳がやさしいから。

 直視できないくらいに。

「デートじゃないかもしれないけど、もう少し俺に付き合ってほしい」

 探るような笑顔に心が浮足立つ。

「べ、別に、デートでもいいんじゃないかしら」
「え?」
「ちゃんとプランを立てて計画して、二人きりなんだから……デートでも、いいんじゃない?」

 どうして私はこんな言い方しかできないんだろう。お膳立てを全部してもらって、私は地図に書き込むだけ。おまけみたいな仕事だ。こんなにしてくれるニコラに、他の女の子ならもっと――。

 私の頬にそっとニコラの指が触れた。

「可愛い」

 どうしたらいいか分からない。
 今なら、私。
 キスだって――。

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