転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「あ、夜のドライブをする前にっと」

 ニコラがゴソッとポケットから袋を取り出した。私はつい、睨んでしまう。

「あれっ。なんでそんな怖い顔をしているんだ!?」
「なんでもない。それ、なに」
「ほら、俺が最初に作ったビーズの指輪だよ」
「あ……」

 シンプルなつくりだ。金色の小さな一連ビーズに青の小さなガラス玉が一つ。おそらく相手が実際につけることを想定していない。金の髪で青い瞳の王子様にもらった記念品、そんなイメージで作ったんだろう。

「ほんとはさ、これをボトルに入れるのをやめた理由、嘘ついたんだ」
「え?」
「最初に指輪をあげる子は、やっぱりラビッツがいいなって思ってさ」
「そ、そう」

 頬に熱が突然集まってきた。大丈夫よね、夜だから分からないわよね。

「だからこれをはめるのは、今だけな」
「……どーゆーこと?」
「サイズが知りたいんだ。ちゃんとラビッツ専用に作るよ。生徒会長とお揃いのものは、やっぱりあげたくないしさ。この指輪、俺の小指にちょーどいいんだけど――」

 私の手を取って、スルッとはめられる。もっと、ロマンチックなやり方があるでしょう!?

「やっぱり小指にはガバガバか……となると」

 少し躊躇うように私の手をとりながら、じっと見つめられる。

 まったくもう!

「将来の練習でもしたら?」

 彼の持つ私の手は……左側だ。私の言葉に応えるように、やや緊張した様子で指に通される。

「ちょうどいいな」
「そうね」

 左手の薬指。

 私たちは婚約をしているけど、親同士の取り決めだ。婚約指輪もまだない。まだ成長期。もう止まったと思うけど……これから背だけでなく指も多少は大きくなる可能性もないとは言えない。

「じゃ、このサイズで作る。ラビッツのことを考えて」
「わ、分かったわ」

 待ってると言おうとして、緊張して言えなくなる。指輪を外された薬指が寂しい。まだはめていたいと、我儘を言いたくなる。

「行こう」
「うん」
 
 風が髪を揺らし、星が瞬く。
 この時間が、ずっと続けばいいのに。

 そう思っても、止まってなんかくれなくて――。

「今日はありがとな」

 寮の前でお礼を言う彼の腕を、引き止めるように掴んだ。

 だって、絶対にしてくれない。自分からはしてくれないもん。そんな雰囲気だって、つくってくれない。

「今日、綺麗だったから! お礼!」

 ニコラの頬に勢いよくキスをして、寮の中へと走る。

 今の自分の顔は――、見たくない。

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