友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 ああいうのを見てしまうと、本当に私でよかったのかなと考えずにはいられない。
 彼の隣には、若くて女の子らしい人が寄り添うべきだったんじゃ……?

「今のままでも、充分かわいらしいと思いますよ」

 悪い思考がぐるぐると頭の中を周り、だんだんと気分が沈んできた頃――夫の口から思いがけない褒め言葉が聞こえてきた。

「庇護欲を掻き立てられるというか……。俺が見ていてあげないと。菫さんは、ミスが目立ちますからね」
「それ、貶してるでしょ!?」

 それに大喜びして、ドキドキと心臓を高鳴らせた私のときめきを、返してほしい。
 そう叫び出したい気持ちでいっぱいになったけど……。
 蛍くんが屈託のない笑顔を見せてくれたから、チャラにしてあげようかな。

 そう考えた私は後輩と一緒に帰社し、夜遅くまで仕事に明け暮れた。
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