友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
5・友情を抱き続けるなんて無理
「おおー! ここが、新居……!」

 友情結婚をしてから、3か月の時が過ぎた。
 私達は2DKのマンションへ引っ越し、ようやく一つ屋根の下で暮らしを始めることになった。

「ちょうどいい物件が空いていて、本当によかったですね」
「うん!」

 部屋の広さが倍になれば、値段も上がる。
 通勤時間も、長くなってしまうのではないかと恐れていたが……。
 折半すれば今までと同じくらいの金銭負担で、会社からの距離も徒歩20分程度の場所を借りられた。
 これで表向きは、普通の仲良し夫婦に見えるだろう。

「何かあれば、いつでも呼んでください」
「頼りにしてます!」
「遠慮する必要は、ないですからね」

 蛍くんは何かを感じ取ったのか、そう釘を刺してから右側の部屋に引っ込んでいった。
 うーん……。
 明らかに、気を遣わせちゃっているよね……。

 彼は人間観察が趣味だと言うだけあって、他者の思考を読むのが上手い。
 あんまり自分から踏み込んでいくタイプではないけど、私には心を開いてくれてはいるようだ。
 だからこそ、見過ごせないのだろう。

 年上としてはこれ以上、年下に情けない姿は見せられないよ! 

 弱音とか不満とかは、極力表へ出さないようにしよう。

 そう決意し、黙々と荷物の整理を続けた。
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