友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「疲れたー!」
家でも外でも、蛍くんに嫌われないようにしなきゃ。
1人暮らしの時みたいにやりたい放題して、蛍くんへ迷惑をかけないようにしないと。
そう気張っていると、いつも以上に疲労感が溜まる。
私は彼の姿が見えないのをいいことに背伸びをして、つかの間の休息を味わった。
「やっぱり同棲、早まったかなぁ……!」
誰もいないのをいいことに後悔の念を口にすれば、背後から明るい女性の声が聞こえてきた。
「一人で考えているのって、悪いことばっかり浮かんでくるから。よくないよ!」
「へっ!?」
それに驚いて素っ頓狂な悲鳴を上げれば、満面の笑みを浮かべた九尾くんと目が合う。
「やっほー」
「こ、ここ……。社内、だよね? どうやって……」
「打ち合わせ帰りなの。この間の雑誌、すごく評判がよくて! ほかの部署からも、お仕事がもらえたんだ!」
「そうだったんだね……?」
彼女の首元には、一時的に出版社へ出入りする際に必要な社員証がぶら下げられている。
紐の色は緑。一時的な入室許可証なのは明らかだ。
その言い分に間違いはなさそうだった。