友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「莉子、もう帰るね! 何かあったら、すぐに連絡すること!」
「ありがとう。気をつけてね」
「はーい!」

 莉子ちゃんに出会えて、本当によかった。
 そう思いながら満面の笑みを浮かべて彼女を見送れば、休憩室へ夫が顔を見せた。

「菫さん」
「蛍くん! お疲れ様!」
「今の。カメラマンの、九尾さんですよね」
「うん。そうだよ。偶然、社内ですれ違って……」
「俺には相談できないようなこと、話していたんですか」

 彼は真剣な表情で、こちらを見下している。
 口元がへの字に曲がっているあたり、明らかにご機嫌斜めだ。
 私はすぐさま、顔色を窺いながら問いかける。

「お、怒ってる……?」
「いつも、言っていますよね。席を外す時は、メモ書きを残してくれと」
「ご、ごめん! 忘れてた……!」
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